かつての日本の家屋は、素材そのものに美を見いだしていた。白木の柱や梁、磨き込まれた床や廊下、コテ跡の残る土壁に美しさを感じとっていった。化粧ではなく素肌の美しさを愛でる美意識が生まれていった。しかし、今の作り方ではビニールクロスを貼り、ペンキを塗る。素材感、質感はなくなり、表面に印刷された虚構が大手をふってまかりとおる。木目を印刷した天井板はあたりまえ、打ち放しコンクリート模様のビニールクロスなどが大真面目に売られている。伝統的な木や土、石の素材は、手入れさえ心がければ、年を経るごとに美しさを増していく。民家の黒光りする梁や柱、風雨に洗われて微妙な風合いを出す土壁、新建材を見慣れた私たちに深い感慨を呼び起こさないではいられない。それらの素材は、長い時間をかけて、その地の生活や風土を受け入れ、自身の中に刻み込んでいる。歳月そのものにしかなしえない技のすごみが我我を圧倒するのだ。人間の小手先を超えた大いなるものへの共感が我々を揺さぶる。
(参考)
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