必要なのは、「専門家の知識」よりもむしろ「一般的な常識」です。そして、その「常識」を住宅購入者と共有するために努力をすることが、これからの住宅業界の最大の課題になると私は考えています。住宅会社に勤めるまで、住宅に対してお客様からのクレームがこれほどあるとは想像もしていませんでした。住宅を供給することは、多くの人に喜んでもらえることであり、多くの人の生活をより素晴らしいものにすると思っていたからです。ところが、なかにはせっかく住宅を建てたのに、自分が心待ちしていた「豊かな生活」を楽しめない人たちがいるのです。この柱の傷をつけたのは大工なのか内装業者なのか?家が揺れるのは床材が悪いせいではないか?この住宅は地震でも大丈夫なのか?まるで家を持ったがために、生活を楽しめないという感じです。建てている途中でも、大工がきちんと仕事をしていないのではないかと気を揉む人もいます。上手に家を建てる人とは、自分が選んだ住宅会社や大工を信頼して任せられる人ではないかと思います。先入観や氾濫する情報に惑わされてあれこれと心配するのではなく、確かめるべきことはきちんと確かめ、任せるべきところはすべて任せる。住宅会社や設計者、建築家とこうした信頼関係を築けないと、家というものは所詮は人間がつくり上げていくものだけに、どこかにミスが生してくるものです。当然、住宅会社も、この信頼関係を築けるようにできる限り積極的に情報を明示し、お客様の立場で全力を尽くすべきことはいうまでもありません。次に、その住宅会社に「技術があるかどうか」を確かめる裏技を紹介しましょう。まず、三、四社の住宅会社を選び、ノーマルなプランをつくってもらいます。そこから「吹き抜け」や「勾配天井」、一階より二階がせり出す「オーバーハング」などを要望し、どれくらいコストがプラスされるかを聞いてみるのです。この場合、家の広さを同じにすることが条件ですが、各社が出したプランを住宅の品質確保法の、たとえば耐震性能に照らし合わせてみると、その住宅会社の「技術の底」が見えてきます。コストとの兼ね合いでどうやって住宅の品質確保法の耐設性能を維持しようとしているかについて説明を受けてみると、ある程度の技術レベルがつかめるわけです。
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