かつて訪れた外国の建築家たちが、口を揃えて絶賛したのもこの点で、彼らの目に映った、日本家屋の高度な規律と約束事だけによる空間構成は、まさしくそれ自身哲学であると、驚嘆を呼んだのである。中でも、ブルーノ・タウトやフランク・ロイド・ライトは、伊勢や桂離宮の伝統的日本美を世界に知らせ、水平線の強調された造型や寄せ棟風の落ちついた勾配屋根などを、自らの建築にも取り入れた。アメリカ西岸に多い高級住宅を多く手がけたリチャード・ノイトラは、こうした日本の柱間通りのシンプルな柱と梁の構造を鉄骨でつくり、大きなガラスをはめ、外部(砂漠)と室内を完全に融合させ、冷暖房のきいた、日本家屋以上の開放的な住空間を生み出したのである。
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ブロック積みに小さなガラリ窓の、寒さ暑さに強い彼らの住まいが、まるで桂離宮の柱間のように開放され、しかも巨大なガラス襖(スライディングドア)となって、アメリカのハイソサエティの高級住宅のパターンをつくり出したともいえる。折しも建築の合理主義運動とリンクして、どちらがどちらとも証明し難いが、こと住宅に関しては、日本の住文化の自在空間の“輸出”は大きいものといえよう。しかしわが国の現実は、残念ながら、こうした優れた伝統とは裏腹に、エキゾチックな西洋スタイルの住まいにあこがれ(?)、日本本来の住まい文化はぷっつりと途絶え、混乱し、とりわけ終戦とともに進駐軍の簡易宿舎に見習うところから大きく湾曲し、ついには近年の、西欧人の目には「ウサギ小屋」と映るまでに至ってしまったのである。これはまさしく、日本バロック(baroque)からバラック(barrack)への大きな、そして紙一重の転落といえよう。