家の狭さのために、親によって殺されたり、他の不注意によって子どもが死亡する現象がふえている。東京都渋谷区のM荘に住むスナック経営者のOさん(二六歳)が、未明、夜泣きする乳児を寝つかせようと、車で外へ連れ出す途中、事故で死なせてしまった。警察の調べに対し「かん高い赤ん坊の泣き声が、隣近所に迷惑をかけてはと思って」と答えた。Oさん夫妻の住むアパートは、木造二階建て、四畳半一間に風呂場と台所で、家賃は二万一八〇〇円。
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隣室との壁は薄く、たたくとコンコンと音がする。Oさんは「夜になると、隣の部屋でテレビのスイッチを入れるカチャ。という音も、階下の話し声も聞える。人さまの寝静まった時に響く赤ん坊の泣き声に、ただただ気が気でなく、外へ連れ出してしまいました」という。「赤ちゃんにとっては、泣くより仕方なかったんでしょうね」と妻のY子さんは位牌に目をやりながら、ポツリといった。日大付属病院小児科部長はいう。「赤ちゃんは不快や空腹、痛み、ねむけなどの要求を、泣くことだけで周囲に教える。だから、夜泣きは当然の権利だった。泣くことすら拒否される住宅環境は、まったく悲劇というより、小児科としてやり切れなさを感じます」(朝日、七二年一月一九日)生まれたばかりの二男を殺し、実家の台所の戸だなに捨てていた母親Yが、えい児殺人、死体遺棄の疑いで検挙された。Yは昨年、長男を出産後すぐ妊娠したが、夫は「長男と年子では育児も大変で金もかかり、それに部屋も狭い」と中絶するようにいったが、産婦人科医にすでに六ヵ月もたっているので無理と断わられた。一人で二男を出産したあと口の中にちり紙を詰めて窒息死させたもの。Yの夫は運転手で月収約九万円、家賃一万八〇〇〇円で六畳一間と三畳くらいの台所のIK住まい。(朝日、七四年四月五日)東京都新宿区でY子ちゃん(二歳)が変死した。死因は、母親のT子(二四歳)と姉のM子(二六歳)が夜泣きするY子ちゃんを静かにさせようと、手をしばって段ボール箱に寝かせ、顔にカーテン地をかけたための窒息死とわかった。Y子ちゃんの遺体からは、六ヵ所のやけど痕と明らかにせっかんとわかる六ヵ所の打ち傷、切り傷も確認された。M子夫婦の家は木造二階建ての二階八畳間一室で、夫婦とT子一家の六人がひしめいていた。M子は隣人に気がねし、T子はその姉に遠慮して「泣くんじゃない」といつもしかっていた。「八畳一間に六人、他人には想像のつかない、修羅場だったんでしょうね」と、係官はいった。(朝日、七六年二月一〇日)事故や不注意といい親の意志によるものといい、住居の貧しさは赤子の生命を奪っている。これを現代の「間引き」といわずして何といえようか。